新人理学療法士とし臨床現場に出ると、患者さんの安全を守る責任が求められます。しかし、どれだけ気をつけていても、思わぬ事故やトラブルが起きてしまうことがあります。実際に、医療現場では転倒事故や説明不足によるトラブルが訴訟につながるケースも少なくありません。
本記事では、新人理学療法士が知っておくべきリスク管理の基本と、実際の訴訟事例から学ぶ7つの予防策をわかりやすく解説します。これを読めば、患者さんに安心してリハビリを提供でき、自分自身もトラブルから守るための知識が身につきますよ!
1. 転倒事故を防ぐための「3つの確認」
患者さんの転倒事故は理学療法士にとって最も多いリスクのひとつです。ある事例では、歩行訓練中に患者さんが転倒し骨折したことで、病院側が損害賠償を求められるケースがありました。このような事故を防ぐためには、以下の3つを徹底しましょう。
- 環境確認
訓練エリアや通路に障害物がないか、床が滑りやすくないかを確認します。特に雨の日は屋内でも床が濡れていることがあるので注意しましょう。 - 装具確認
松葉杖や歩行器などの装具が正しく調整されているか確認します。ゴムキャップが摩耗している場合は交換する必要があります。 - バイタルサイン確認
血圧や脈拍など患者さんの体調をチェックし、安全に歩行訓練ができる状態かどうかを判断します。異変を感じたときはすぐに周りに助けを求め、DrやNsに報告するようにしましょう。
2. 説明不足によるトラブルを防ぐ「インフォームドコンセント」
患者さんへの説明不足は、トラブルや信頼関係の崩壊につながります。例えば、「治療内容について十分な説明がなかった」として訴えられるケースもあります。これを防ぐには次のポイントを押さえましょう。
- 簡潔でわかりやすい言葉で説明する
医療用語は避け、日常的な言葉で説明します。例えば、「膝関節可動域」と言うより「膝を曲げ伸ばしできる範囲」と言った方が伝わりやすいです。 - 患者さん自身に説明してもらう
患者さんに自分で説明してもらうことで理解度を確認できます。 - 書面や図解を活用する
説明内容を紙にまとめたりイラストを使ったりすると、よりわかりやすく伝えられます。今はネット上でも使用できる画像増えているため上手く活用してみてください。
3. 記録は「漏れなく・簡潔に・正確に」
カルテ記載は医療者として非常に重要な業務です。不十分な記録は法的リスクにつながります。ある訴訟では、「治療経過が記録されていなかった」ことが問題視されました。カルテ記載では以下のポイントを守りましょう。
- 実施内容:「何をしたか」を具体的に記載(例:膝関節屈曲角度90°まで改善)。
- 変化点:「治療前後でどう変わったか」を記録(例:痛みスコア8→5)。
- 次回計画:「次回どんな治療をする予定か」を明記(例:筋力強化プログラム追加)。
またもちろんですが、リハ中(例:9:00~9:40でリハ実施と記録しているのにも関わらず、9:30にリハを終わり10分間カルテを書いている等)に記録するのは絶対にダメです。
4. 緊急時対応力を高める「シミュレーション訓練」
患者さんの体調急変時に適切な対応ができないと、大きな事故につながります。例えば、心肺停止時にAED(自動体外式除細動器)を使用できず救命措置が遅れたケースがあります。このような事態に備えるためには
- AEDや酸素ボンベなど緊急機器の場所と使い方を把握する。
- 病院内での合同の勉強会を実施、また月1回以上、自身でシミュレーション訓練を実施する。
- チーム内で役割分担(誰が連絡するか、誰が機器操作するか)を明確にしておく。
5. 医療機器管理は「定期点検」が命
理学療法士は日々さまざまな医療機器を使用します。しかし、その機器が故障していたり適切にメンテナンスされていないと、大きな事故につながります。
- 使用前後には必ず機器の状態(動作確認・消耗品チェック)を行う。
- 定期的な点検スケジュールを立てる。
当院では必ず週に1回機器チェックの日を設けており、スタッフ全員でリハが使う機器は点検するようにしています。普段使用している中でもちょっとでも違和感を感じたら上司へ報告するようにしましょう。
6. チームワークでリスク軽減:「報告・連絡・相談」
新人理学療法士として働く際には、一人で抱え込まずチームで連携することが重要です。「報告・連絡・相談」を徹底することで、多くのリスクは未然に防げます。
報告
患者さんの状態変化や問題点は必ず上司や指導者、Ns等の多職種へも報告するようにしましょう。たったこれぐらいいいかと思うこともあるかもしれませんが、些細なことでも報告するほうがいいかと思います。
連絡
報告同様他職種(看護師や医師など)との連携も忘れず、必要な情報はタイムリーに共有します。
相談
判断に迷った場合は、自分だけで決めず必ず相談してください。「聞きづらい」と思うことでも遠慮せず質問しましょう。年数重ねると相談もしにくい空気等も少し出てきたりはします(僕はずっとしまくっていますが笑)。新人のうちにどんどん相談するのがおすすめです。
7. 自分自身も守る「ストレス管理」
リスク管理には、自分自身の健康状態にも目を向けることが大切です。疲れた状態ではミスが増えたり判断力が低下しやすくなります。以下の方法でストレスケアを心掛けましょう。
- 毎日5分、自分自身の日誌を書く(今日良かったこと・反省点など)。
- 定期的に趣味や運動でリフレッシュする。
- 同僚とのコミュニケーションで悩みを共有する。特に同期入職の方とは円満な関係性を築いておくのがおすすめです。
まとめ:リスク管理は新人理学療法士の第一歩
リスク管理は難しいものと思われるかもしれませんが、一つひとつ実践していけば必ず身につきます。本記事で紹介した7つの予防策
- 転倒事故防止
- 説明義務徹底
- 正確な記録
- 緊急時対応
- 機器管理
- チーム連携
- ストレス管理
これらはどれも新人理学療法士でもすぐ始められる内容です。「患者さんと自分自身の安全」を守るため、今日から意識して取り組んでみてください!明日からの臨床が、より充実したものになりますように。
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