新人理学療法士・作業療法士向け。初めての担当患者への不安を乗り越えるための5つのステップと最強の勉強法

新人理学療法士

「来週から、〇〇さんの担当をお願い」

先輩からそう告げられた瞬間、心臓が大きく脈打つのを感じたのではないでしょうか。

国家試験を突破し、希望に満ちて理学療法士・作業療法士としてのキャリアをスタートさせたばかりの新人セラピストにとって、「初めての担当患者さん」は、喜びとともに大きな不安とプレッシャーがのしかかる、人生の大きなイベントの一つです。

「自分の知識や技術で、本当に患者さんを良くできるんだろうか…」

「評価の進め方、これで合ってる?」

「先輩や医師に、なんて報告すればいいんだろう…」

次から次へと湧き上がる不安に、押しつぶされそうになっていませんか?

ご安心ください。その感情は、あなただけが抱えているものではありません。今、第一線で活躍しているどんなベテランセラピストも、誰もが同じ道を通り、同じように悩み、乗り越えてきました。私自身も新人時代は、毎晩のように教科書と担当患者さんのカルテを交互に眺め、ため息をついていた一人です。

この記事では、そんな不安でいっぱいの新人理学療法士であるあなたが、自信を持って初めての担当患者さんと向き合い、確かな一歩を踏み出すための具体的な方法を余すところなくお伝えします。

この記事を最後まで読めば、あなたは以下のことを手に入れられます。

  • 漠然とした不安の正体が分かり、心が軽くなる
  • 初めての担当患者さんに対応するための具体的な5つのステップ
  • 明日からの臨床ですぐに使える、効果的な勉強法

一緒に不安を自信に変えていきましょう!

目次

なぜ、初めての担当はこんなに不安なのか?

まず大切なのは、自分の「不安の正体」を正しく理解することです。敵の正体が分かれば、対策の立てようがあります。新人セラピストが抱える不安の多くは、以下の3つに集約されます。

1. 圧倒的な知識・技術不足への焦り

国家試験のために膨大な知識を詰め込んできたはずなのに、いざ目の前の患者さんを前にすると、「あれ、この場合はどの評価を使えばいいんだっけ?」「この疾患の注意点は何だっけ?」と、自分の知識の引き出しが空っぽに感じてしまう。これは、多くの新人が経験する「理論と臨床のギャップ」です。

教科書に載っている典型的な症例は、現実にはほとんど存在しません。合併症、既往歴、生活背景、個人の価値観…それらが複雑に絡み合った「一人の人間」を相手にする臨床現場では、知識を応用する力が求められます。その応用力のなさに焦り、不安を感じてしまうのです。

2. 患者さんの人生を背負う責任の重さ

理学療法士・作業療法士は、患者さんの「人生」に深く関わる仕事です。私たちの評価一つ、アプローチ一つが、その人の「歩けるようになる」「家に帰れる」「仕事に復帰できる」といった未来を左右する可能性があります。

この仕事のやりがいであると同時に、その責任の重さは、経験の浅い新人にとって大きなプレッシャーとなります。「自分のせいで、悪くしてしまったらどうしよう…」という恐怖は、常につきまといます。正直これは今でも考えてしまうことがあります。

3. 先輩や他職種とのコミュニケーションへのプレッシャー

臨床はチーム戦です。指導してくれる先輩(プリセプター)や、医師、看護師、作業療法士、言語聴覚士など、多くの専門職と連携(報・連・相)を取る必要があります。

「こんな初歩的なことを質問して、呆れられないだろうか?」

「カンファレンスで、的確な報告ができるだろうか?」

他職種との円滑なコミュニケーションは、質の高いリハビリテーションを提供する上で不可欠ですが、新人にとっては高いハードルに感じられるでしょう。

これらの不安は、真摯に患者さんと向き合おうとしている証拠です。決して恥じることではありません。その気持ちを大切にしながら、次にご紹介する具体的なステップに進んでいきましょう。

不安を自信に変える!初めての担当を乗り越える5つのステップ

では、具体的に何をすれば、目の前の不安を乗り越えていけるのでしょうか。

ステップ1:徹底的な情報収集

担当が決まったら、まずは患者さんの情報を徹底的に収集することから始めます。評価や治療の前に、この情報収集の質が、その後のすべてを決めると言っても過言ではありません。

  • カルテの読み込み
    • 基本情報: 氏名、年齢、性別、入院日、診断名、主治医など。
    • 現病歴: なぜ入院・リハビリが必要になったのか。発症から現在までの経緯を時系列で把握します。
    • 既往歴・合併症: 現在の疾患に影響を与えうる過去の病気や怪我、併発している病気(高血圧、糖尿病、心疾患など)をチェックします。特にリハビリ実施上のリスク(禁忌事項)は必ず確認してください。
    • 画像所見: レントゲン、CT、MRIなどの画像から、病態を立体的に理解します。分からなければ、遠慮なく先輩や医師に質問しましょう。
    • 薬剤情報: 服用している薬を確認し、副作用(ふらつき、血圧変動など)がリハビリに与える影響を考慮します。
    • 看護記録・他部門からの情報: 看護師さんが記録した日中の様子や、ソーシャルワーカーからの生活背景情報など、患者さんの全体像を掴むための重要な情報が満載です。
  • 先輩からの情報収集(申し送り)
    • 可能であれば、前任の担当者や指導者の先輩から、直接情報を聞きましょう。カルテには書かれていない、患者さんの性格、キーパーソン、コミュニケーションで気をつけるべき点、リハビリの進捗など、生きた情報を得ることができます。

この段階で得た情報を、自分なりにまとめておくと、頭の中が整理され、次のステップに進みやすくなります。

ステップ2:評価の準備を完璧にする

情報収集で得た情報をもとに、次に評価計画を立てます。いきなり患者さんの前で「えーっと、次は…」と迷わないために、事前の準備が重要です。

  1. 評価項目をリストアップする:情報から考えられる問題点を仮説として立て、それを検証するために必要な評価項目をリストアップします。
    • 情報収集から: 疼痛の部位、関節可動域制限が予想される関節、筋力低下が疑われる筋など。
    • 疾患特異的な評価: 脳卒中ならブルンストロームステージやSIAS、整形外科疾患ならスペシャルテストなど。
    • 基本的な評価: 意識レベル、バイタルサイン、疼痛評価(VAS)、関節可動域(ROM)、徒手筋力テスト(MMT)、感覚検査、バランス評価(BBS)、ADL評価(FIM、BI)など。
  2. 評価の手順を確認・練習する:リストアップした評価項目のうち、自信のないものや初めて行うものは、事前に教科書や動画で手順を再確認しましょう。同期や先輩に頼んで、実際に練習させてもらうのが最も効果的です。ゴニオメーターやメジャーなどの物品準備も忘れずに行いましょう。

準備を万全にすることで、「何をすれば良いか分からない」という不安が、「これを確かめよう」という目的意識に変わります。

また評価していく中で「これはどうなんだろう?」「これができないってことはこの評価もやってみよう」などさらに評価したい項目が出てくるはずです。

ステップ3:目標設定の基本を抑える

リハビリテーションは、患者さんとセラピストが共有する「目標」に向かって進めていきます。この目標設定が、モチベーション維持と効果的なプログラム立案の鍵となります。

  • 患者さんの希望(HOPEやNEEDS)を聞き出す:初回の面談で最も大切なのは、「患者さん自身がどうなりたいか」を丁寧に聞くことです。「家に帰りたい」「散歩に行きたい」「孫を抱っこしたい」といった具体的な希望を傾聴し、尊重する姿勢が信頼関係の第一歩です。
  • S.M.A.R.Tの原則を活用する:患者さんの希望をもとに、医学的な視点を加えて具体的な目標を設定します。その際に役立つのが「SMART」というフレームワークです。
    • S (Specific): 具体的なM (Measurable): 測定可能なA (Achievable): 達成可能なR (Relevant): 関連性のあるT (Time-bound): 期限を設けた
    (悪い例): 歩けるようになる。                                    (良い例): 1ヶ月後(T)に、見守りレベル(A)で、病棟内をT字杖を使って30m連続歩行(S, M)できるようになることで、トイレに自分で行けるようになる(R)。

このように短期目標、長期目標を設定し、患者さん・ご家族と共有することで、リハビリの方向性が明確になります。

ステップ4:コミュニケーションの心構え

どんなに優れた知識や技術も、患者さんとの信頼関係がなければ効果を十分に発揮できません。特に初対面のコミュニケーションは重要です。

  • 自己紹介と挨拶: 明るく、はっきりと自分の名前と役割を伝えましょう。「今日からリハビリを担当させていただきます、理学療法士の〇〇です。よろしくお願いいたします」と、まずはお辞儀をするところから。
  • 傾聴の姿勢: 相手の話に真摯に耳を傾けましょう。相槌を打ち、時折「〇〇ということですね?」と内容を確認することで、相手は「しっかり聞いてくれている」と安心します。
  • 分かりやすい言葉で説明する: 専門用語は避け、平易な言葉で説明することを心がけましょう。身体を触る前には「今から膝の曲がり具合を見ますね」と一声かける(インフォームド・コンセント)のが基本です。
  • 共感と受容: 患者さんが訴える痛みや不安に対して、「痛いですよね」「不安になりますよね」と、まずはその気持ちを受け止めることが大切です。決して否定したり、軽くあしらったりしてはいけません。

完璧なコミュニケーションを目指す必要はありません。誠実で、一生懸命なあなたの態度は、必ず患者さんに伝わります。

ステップ5:振り返りと相談

初めての評価・治療が終わったら、必ずその日のうちに振り返りを行いましょう。

  • カルテへの記録(SOAP):
    • S (Subjective): 患者さんの主観的な訴え
    • O (Objective): 評価によって得られた客観的な事実
    • A (Assessment): SとOを結びつけて問題点を分析・統合・解釈
    • P (Plan): Aに基づいた今後の治療計画
    このSOAP形式で記録を書くことで、自分の臨床思考プロセスが整理されます。
  • 先輩への報告・相談:振り返った内容をもとに、必ず指導者の先輩に報告し、フィードバックをもらいましょう。これが最も重要な成長の機会です。「〇〇さんですが、本日初回評価を行いました。主訴は△△で、評価結果は□□でした。そこから私は××が問題点だと考えたのですが、この解釈で合っていますでしょうか?また、今後のプランとして☆☆を考えているのですが、ご意見をいただけますでしょうか?」このように、「自分の考え」を添えて質問することで、先輩も的確なアドバイスがしやすくなります。「○○さんどうしたらいいですか?」等の丸投げの質問は避けましょう。

この5つのステップを丁寧に踏むことで、漠然とした不安は、具体的な課題へと変わります。そして、その課題を一つひとつクリアしていくことが、あなたの確かな成長に繋がりますよ。

【現役PT推奨】明日から臨床で使える!最強の勉強法3選

日々の業務に追われる中で、どうやって勉強時間を確保し、効率的に知識を吸収すれば良いのでしょうか。ここでは、私が実践し、多くの後輩にも勧めてきた効果的な勉強法を3つご紹介します。

① 担当症例をとことん深掘りする

最も効率的で実践的な勉強法は、自分の担当患者さんについて徹底的に調べることです。

担当患者さんの疾患について、解剖学、運動学、病理学の教科書をもう一度開き直す。最新の診療ガイドラインを調べる。類似症例の論文を検索する。この「点」の学びが、関連知識と結びつくことで「線」となり、さらに経験を積むことで「面」となって、あなたの臨床能力の土台を築きます。

② OJT(先輩の臨床)を積極的に見学する

初めての担当症例を持つような段階ではまだ自身の担当数にも余裕があるかと思います。その時間を使い、自分の担当患者さんだけでなく、先輩セラピストの臨床を積極的に見学させてもらいましょう。

自分とは異なる疾患の患者さんへのアプローチ、難渋している症例への対応、他職種との連携の仕方など、現場には盗める技術や視点が溢れています。見学後は、「なぜ、あの手技を選択したのですか?」「あの場面での声かけの意図は何ですか?」と質問することで、学びがさらに深まります。

③ 外部の学習ツールを有効活用する

院内での勉強会や伝達講習も重要ですが、それだけでは知識が偏ってしまうこともあります。より広く、深く、そして最先端の知識を得るためには、外部の学習ツールを積極的に活用することをお勧めします。

学会や研修会に参加するのも良いですが、有休もあまりない・貯金もあまりない等時間や費用の制約が大きいのが新人にとってはネックです。そこで、私が特に強くお勧めしたいのが、リハノメのようなオンライン動画学習サービスです。

数あるオンライン学習ツールの中でも、リハノメがコンテンツ数も多く、臨床に即活かせる内容が多いためおすすめです。1本の動画の時間も短いものも多いため、通勤時間やスキマ時間でサッと見れるのもおすすめポイントです。

一回飲み会我慢すればこのレベルのセミナー受け放題なのは破格なのでとりあえず1か月だけでもやってみるべきだと思います。

新人時代に意識するべきこと

完璧じゃなくていい

新人なのだから、できなくて当たり前です。最初から完璧な評価をし、完璧な治療ができる人はいません。大切なのは、完璧を目指すことではなく、目の前の患者さんに対して、今の自分にできる最大限の準備と努力をすることです。その誠実な姿勢こそが、最も尊いのです。

一人で抱え込まないで

理学療法士・作業療法士は孤独な仕事ではありません。あなたの周りには、必ず助けてくれる先輩、同僚、他職種がいます。分からないこと、不安なことは、勇気を出して相談してください。「報・連・相」は、あなた自身を守り、そして何より患者さんを守るための重要なスキルです。

患者さんから学ぶ姿勢を忘れないで

私たちは患者さんを「治療する」立場ですが、同時に多くのことを「学ばせてもらう」立場でもあります。病気や障害を持ちながらも、懸命に生きようとする患者さんの姿から、私たちは人としてのあり方を学びます。その感謝と謙虚な気持ちを忘れなければ、あなたは人としても、セラピストとしても、大きく成長できるはずです。

まとめ

初めての担当患者さんは、あなたの理学療法士・作業療法士人生における、忘れられない1ページになります。不安、緊張、焦り、そして、ほんの少しの喜び。その全ての感情が、あなたをプロのセラピストへと育ててくれます。

今回ご紹介した「5つのステップ」を羅針盤とし、「3つの勉強法」、特にリハノメ」のようなツールを武器として活用しながら、目の前の壁に立ち向かっていってください。

  1. ステップ1:徹底的な情報収集
  2. ステップ2:評価の準備を完璧にする
  3. ステップ3:目標設定の基本を抑える
  4. ステップ4:コミュニケーションの心構え
  5. ステップ5:振り返りと相談

あなたのその手で、一人でも多くの患者さんを笑顔にできる日が来ることを、心から応援しています。自信を持って、臨床という素晴らしい舞台へ踏み出してください。

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